ワークショップレポート

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▶ レポート番外編 ドアーズ10thのワークショップ勉強会!

2016/04/06 (21:20) | ワークショップレポート

4月2日(土)に開催されたワークショップ勉強会のレポートです。
昨年開催された勉強会レポートと合わせて読むと、理解がぐっと深まるのでオススメです!

【今回の勉強会のポイント】



『ワークショップというのは「一人一人違ってていい。一人一人違っていると困る。」の間にあるものと思ってみよう。』これが今回講師の中脇 健児さんから提示されたポイントです。

一人一人個性があって違っていいのは当然、でもグループで同じことをするなら、あまりに一人一人違うと困りますよね?それを前提とした場がワークショップであると、改めて認識してみることがポイントになりました。

 ・お互いの共通点を感じたり
 ・共通点は無かったとしても自分が歩み寄れるポイントを見つけたり
 ・喋ったりしている中でお互いの嗜好は違うなとわかってもとりあえず一緒に協働していく。


そういったさまざまな人が参加する場であることが「ワークショップ」という場です。それを勉強会を通して「わかる」ことが今回のテーマ。
「わかる」というのは、①話し合ってわかる、②やってわかる。の2種類があります。
この重要性を体験して覚えて帰るのが今回の目標です。
 
 
***

【~勉強会で行ってみたことの流れ~】
今回はあえて目的やねらい、進行方法などを話さずに始まりました。
それぞれにどういう意味を込めて行ったのか、一緒に考えてみましょう。長いレポートなので、一番最後の「班発表」の中脇さんからのコメントや、質問の所だけ読んでみてもとてもためになりますよ!

■バースデーリング等のアイスブレイク
■班ごとに自己紹介

普段やっていることや興味ある事を紹介する4つのキーワードを紙に書いて1分で自己紹介。4つのキーワードの中には一つだけ嘘が!
自己紹介した人に質問をして、みんなでどれが嘘かを当ててみる。
最後は班ごとに一番面白かったMVPを紹介。それも自分で紹介ではなく、本人以外の人によってどの辺がMVPなのか紹介していく。











中脇:
今のワークでは、見る・聞く(=聴く・尋ねる)ということをしてみました。

次は、気になったキーワードを持つ人でペアになって他己紹介をしてもらいます。
その人の活動のルーツ・原点みたいな所まで、エピソードや情景を交えながら聞いてみましょう。「そうなんですね、そこわかります」と、聞き手として一番共感したことを大事にベースにして聞いてください。
紹介の際は、主語が「この人はこうで、私はここに共感した」とはっきりさせながら言ってください。






(他己紹介終了・・・)
■紙でタワー作る。
班ごとにA4コピー用紙で大きなタワーを作りましょう。ただし作っている間は一切会話してはいけません。話さずに意思疎通をとって、大きなタワーを作りましょう。






■今日の勉強会は何が狙い?模造紙に書いてみよう!
一連のプログラムはこれで終了。実際にワークショップを手掛ける側になるので、せっかくなのでこの一連の流れは一体何だったんでしょう?ということを考えて、模造紙に整理してみましょう。
今日は1回もプログラム的なものを渡していないけど、「ここの狙いってこうだったんじゃない?この狙いからするとここが前振りになるな。」等、分析でもいいしここが面白かったというレベルでもいい。今日の流れを振り返りながらやってみる。









(班発表その①)
バースデーリングを全員でやったあと、自己紹介のときがグループで、他己紹介はペアでと、最初は大きなグループでワークしたのが次第に小さなグループになっていった。ワークの動きとして、大→小 小→大への流れがあった。
最初は誕生日とか当たり障りのない情報から、自己紹介・他己紹介という段階的に情報をパーソナルな部分、プライベートな部分と聞いていったので、自分のことも話しやすいし他人の方からも聞きやすい雰囲気が出来た。


中脇:
ワークショップで言う「人数のデザイン」「コミュニケーションのデザイン」への気付きですね。ここは配慮していった所でした。
狭く少なく、パーソナル・プライベートな所へ「深めていく」という要素に移っていき、階段をのように段階的なステップを踏んでいきました。




(班発表その②)
「段階」のことをみんな言っていた。
バースデーリングでは何月何日生まれという簡単な情報から、同じワークの中でお互いを見比べて違いを見つける「見比べ」が必要なコミュニケーションに移り、その中で最後は課題自体をみんなで設定するという高度なコミュニケーションになっていったと思う。
後半のワークでは、名前を言わずに進行していったことに対して、もやもやした人と、名前を言わずに進む自己紹介を面白いと感じる人もいた。

最初は番号振り分けによる偶然の出会い方が、次は4つのキーワードを書いたボードを見せながら歩いて興味の合う人と出会うという、ステップアップの仕方をしている。
全体を通じてだんだんと自分の情報を自己開示していく、深めていく流れがあった。
紙のタワーづくりを最後に持って来られた意味で意見が別れた。息抜き的な簡単な役割に感じたので、自己紹介のときでも挟む程度のことでも良かったのでは?という意見も出た。最後のワークの意味が凄く謎。


中脇:
「主体性」を無理なくどう参加者に発揮させるかという点。
最初のワークテーマ自体は実は即興のもの。雰囲気を見ながらで作っていったら良いコミュニケーションが生まれた。その後からは計画したもので、バースデーリングの中で聞かないとわからないような情報を探る課題へとリンクした。

「名前言わないのがもやもや新鮮派」完全に失念していました・・・笑!

最後の「紙のタワー」は、このまま終っても良かったが、みなさんの理解が大分深まったので、「ワークショップ」で言う コミュニケーションとは=話す だけではないということを伝えたかった。
話してわかる・やってわかる ということをワークショップはするものだけど、コミュニケーションを強制されるというのは正直きつい。それに、話すだけではわからない事、話さなくてもわかることもたくさんある。
ドアーズは創作系のWSが多いので、あえて言葉を無しにした場合の意思疎通のあり方、言葉を使わない中で出てきたみなさんの意思疎通、言葉を使ってないのに共有できたことや、実は使わない方がよく喋れたんじゃない?ということを感じて欲しいし、言いたかったことだった。
「よし、じゃあ対話しましょう」とWSを持っていくこともあるが、それだけじゃないと伝えたかった。その意味でやりました。




(班発表その③)
バースデーリングのときはみんな雰囲気が緊張していたと思うが、一つみんなで何かやるということで解れて来た。クイズ形式になったときに、お互いをよく観察しなくてはいけないし話すテーマが与えられていたのもあって、気軽にコミュニケーションをとっていくことが出来た。
軽い所から深い所へ移って行って、それらがゲーム形式で行うことで、積極的に関心を持って聞くということが出来たのではと感じた。
他己紹介では、その人に感じたことを自分の中に入れて共感して考えることで、その人に対して距離が縮んだ。
紙のタワーはお互いをよく見てやらないと出来ないので、協調性というものが必要になるワークだったと感じた。


中脇:
「見る」ということへの重要視、実際ワークショップをするにあたっては、やっぱりきちんと見なくてはいけない。そこが大事なので、そこに注目してくれたのは嬉しい。
嘘当てゲームをしたときの書いてもらった4つのキーワードでは、偶然の面白さや関心を高めるという目的があったが、「私が」興味を持つ・「私が」あなたにどう興味を持つかという、「私」であるゆえに一人一人興味の持ち方が違っていいという部分で、深めていきたい重要な部分だった。


(班発表その④)
人の動きがすごく多い、場所を移動して違うワークショップだった。全員が喋るように段階を持っていったなと思った。


中脇:
動きの多いワークショップというのは、ワークショップは人数のデザインの他に空間の伸び縮みという使い方がある。
ワークショップは安心安全の場づくり。それは「ケガしないように」という安全もあるが、「心の傷」を負わない。心にケガしない。そういう点でもすごく気を付けなくてはいけない。「ここで出た言葉は口外しない」や、最初に事務局から案内があったような撮影注意など、細かな所でも気持ちへの配慮はしていく必要がある。
例えば、床に座るのがしんどい人がいた場合や、手がうまく使えないということが発生した場合に、「ああじゃあ、今日は見ておいてください」ではない、そういう事態を想定してきちんと選択肢を持って臨めると良い。




(班発表その⑤)
本人のことがよくわかる仕組みになっていると感じた。
普通に自分の事を言うよりは、嘘を入れると意外性が出る、嘘も結局突拍子もないことではなく自分から出てくるので、新しい自己紹介として面白いなと思った。
その上最初に作った嘘も入った4つの自己紹介キーワードのボードが、2人一組になるときにも使うし、他己紹介インタビューのきっかけにも使うし、後々まで効いてくるのが関心したことだった。
また他己紹介のときに、ルーツに遡って聞く、表面上だけじゃないことを聞けて良かった。


中脇:
「深める」ってなかなか難しいこと。
方法としてよく言うのは「情景の共有」があるが、抽象的で難しいし、出てくるエピソードも抽象的になってしまう。原点やルーツに話のテーマを持つことで具体性をつけた。

あとは「深める」について技術的なことだが、人に伝える際のポイントで、言葉じゃなかなか伝わらないことがある。どういうことなのかどうなのか見本となる型を1回見せて体験してもらうと方法として理解されやすい。
アッサリした型から体験して貰って、次は質問だけ変えてみましょうとか、見本見せますねとか、型から伝えますねとか。ちょっとみんなの理解がもやもやっと、ふわふわっとしたな!と思ったら「ちょっと見本見せましょっか」という対応をするのは、とても効果的に働く。

あと、「嘘」とかネガティブなことは心の傷になることもあるが、おもしろおかしく、普通ネガティブなことをプラスに変えていく工夫も結構重要。


***

【まとめ】
中脇さんから本日のまとめを最後に。



「どの班の発表でも共通して言ってもらったのが、『段階を踏んでましたよね』という指摘だったが、実は結構細かく工夫を入れている。
自分は、ワークショップというのは「登山」、それもグループ登山のイメージで考えている。
登山というのは「チェックイン」=状況に応じて足並みを揃えるということをまずする。予めどのような格好・持ち物なのかアナウンスはするが、準備出来ていない人がいればそれに合わせて臨機応変に対応する。」

「グループ登山なので、目的が途中で変わってもいいと思っている。山に登るだけが目的じゃない。「今日のメンバーは意外にみんな花をつんだり うろちょろしたりするな~」というのであれば、「それなら今日は5合目ぐらいで写真撮るかあ!」というぐらい、そういう変化で僕はいいと思っている。
でもあまりブレてもよくないので、4つか5つぐらい目標を設定して半分でもクリア出来たら合格点を出してあげようと思っている。
全部の達成を目的にせずに、自分の目標も段階的に捉えている。」

登山で結構難しいのが下山の仕方。下山が大事。ガタガタガタ!っと一気に降りてしまうと肉離れを起こしたり、ケガのもと。段階的に一段一段降りていく。
今日であればメインワークで大分深まったので、最後に入る前に休憩を入れて空気を変えて、休憩後は紙のタワーでゲームを入れることで少しリラックスしましょうか、と進めていった。
その上で、今日は最後の分析が無いと場が崩壊してしまうプログラムだったので、少し時間がかかっても振り返りに時間を大きく割くことで、きちんとした下山に繋げた。

「ドアーズであれば下山、登山を含めて1時間で行う必要がある。
 ・アイスブレイク
 ・メインワーク
 ・メインワーク②
 ・ちょっと振り返り(振り返りと気付きの共有)
  答え合わせ感があると一気に誘導みたいに感じられてしまうので注意。

基本的にのバランスを持ってやってもらったら、それほど大けがにはならないと思います。」


【質問】
「リアルタイムに選択肢の変更をするのは難しそうだが?」
―ちゃんと決めたい人は決めた方が良いと思います。経験してきた場数の違いもある。
実はもう1個違うのもやってみようと思ったが、それをやる前にある程度達成が見られたのでやらなかった。
高く大きくして、みんなで繋げる。全員で一つを作る。
ここから先は幾つか選択肢が出てくるポイントだなと想定しておくと良い。

「ねらいを考えるときにどういうポイントを持ったら良いか?」



―なるべく具体的な方が良い。そして目的はそれぞれが違うことがいい。目的は段階的に作って行き、グラデーションのように捉えていくと、ワーク中の焦りが少ない。
まず ①大前提となる目的を作って、そのための小目標をまた①、②と作って行く。それらの副次的なことでありながら、重要な目的として④がある。
受講者への伝えたいことはもちろん①だが、一番伝えたいの裏目標は④なんです。という形にしていく。

「重要なことは?」
―肯定するということ。承認してあげること。
『なるほどなるほど、いいですよいいですよ』など、自分のペースを発揮しやすいやり方が大切。

「リハーサルはするのですか?一つのワークはこれぐらいの時間を、とか。」
―演劇ワークショップだと稽古付けてってのもありますが、僕はやっていないです。

「(前の質問に付随して)何か秘訣があるのですか?」
―最後の振り返りをもやもやっとするぐらいなら、ギリギリになってもいいからしっかりする!どこを選択肢として持っておくのか。「こんな所まできたらいいな」というのが、前の段階でしっかり達成出来ていたら良いとか、動的な判断をしていく。


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長いレポートでしたが以上で勉強会のレポートは終わりです。
今回講師をしてくださった中脇 健児さんが理事をされている、「NPO法人ワークショップデザイナー推進機構」では上記のようなことを学べる「ワークショップデザイナー育成プログラム」を主催しています。
興味ある方はこちらを覗いてみてくださいね!